障がい福祉サービスの開設で最初に押さえたいのは、「指定を受けたい月」から逆算して動くことです。物件の契約や人の採用を先に進めてしまうと、あとから「この順番では間に合わない」「この条件では申請できない」とわかることがあります。この記事では、大阪市・大阪府の公式情報をもとに、開設前の「順番ミス」と、その避け方を、図や表を使って整理します。
この記事のポイント(3つ)
- 開設は、「開設したい月」から逆算して進めます。
- 法人・人員・物件は、並行して、早めに整えます。
- 事前協議が必要か、不要かで、締切が大きく変わります。
この記事で使う言葉(用語解説)
| 言葉 | かんたんな意味 |
|---|---|
| 指定(指定申請) | 事業所を開設するために、自治体から正式な認可(指定)を受けること。その手続きが指定申請です。 |
| 指定日 | 指定を受けて、事業を始められる日。大阪市・大阪府では、毎月1日付です。 |
| 事前協議 | 正式な申請の前に、人員や設備などの計画を、自治体と確認する手続き。対象のサービスでは、これを済ませないと申請に進めません。 |
| サービス管理責任者(サビ管) | 利用者一人ひとりの支援計画づくりなどを担う専門職。事業所に置くことが求められます。 |
| 法人格 | 会社(株式会社・合同会社など)やNPO法人など、法律上の「法人」であること。 |
| 定款(ていかん) | 法人の目的やルールを定めた、基本の書類。 |
結論:「開設したい月」から逆算し、法人・人員・物件を並行して整える
まず、開設までの全体の流れを見てみましょう。
【図1】開設までの全体の流れ
| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ① | サービスの種類と、事業所を置く場所を決める | 窓口・受付状況・報酬の単価が、場所やサービスで変わります |
| ② | 開設したい月(指定日)を決める | 指定日は毎月1日。ここから逆算します |
| ③ | 法人・人員・物件を、並行して整える | 申請の時点で、すべてそろっている必要があります |
| ④ | 事前協議(対象のサービスのみ) | 指定日の約3か月前に手続きします |
| ⑤ | 本申請(書類一式を提出) | 書類がそろっていないと、受け付けてもらえません |
| ⑥ | 指定(開設) | 毎月1日付です |

ここで大切なのは、③の「法人・人員・物件」が、④・⑤より前にそろっていることです。順番を間違えると、指定日が翌月以降にずれ込むことがあります。
なお、事前協議が不要なサービス(居宅介護など)は、④がありません。そのぶん、⑤の本申請の締切が、指定日のおよそ3週間前になります(大阪府の日程表から読み取った目安です)。
図で見る:指定日から逆算したスケジュール例
大阪府で、令和9年3月1日に開設したい場合の例です。
【図2】令和9年3月1日に開設したい場合(大阪府の例)
| いつ | 事前協議が必要なサービス (例:生活介護・グループホーム) |
事前協議が不要なサービス (例:居宅介護) |
|---|---|---|
| 令和8年12月 | 事前協議(12月1日0時〜12月31日24時) ※就労継続支援A型・B型は、12月15日まで |
手続きはありません |
| 令和9年1月20日 | 本申請協議の1回目の提出期限 | 本申請協議の1回目の提出期限 |
| 令和9年2月10日 | 最終締切(消印有効) | 最終締切(消印有効) |
| 令和9年3月1日 | 指定(開設) | 指定(開設) |
- 最終締切を過ぎると、いかなる理由でも、指定は翌月以降に延期されます(大阪府の案内)。
- ※ 事前協議が必要なサービスの「1月20日・2月10日」は、大阪府の日程表にある令和8年8月1日指定の例(事前協議の有無にかかわらず、同じ日程)から当てはめた例です。実際の日程は、必ず大阪府の「新規指定申請スケジュール」でご確認ください。
- 大阪市は、手続きの仕方が異なります。事前協議は、指定日の3か月前の月初から月末までに、オンラインで手続きします。事前協議が不要なサービスは、指定日の約2か月前に電話で申請の予約をし、面談で書類を提出します。
理由:申請の時点で、人員・設備・法人の条件がそろっている必要があるから
大阪市の案内では、指定を受けるための前提として、次の3つが示されています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 法人格 | 法人格が必要です |
| ② 定款 | 定款に、障がい福祉サービス事業を行うことが記載されている必要があります |
| ③ 人員・設備 | 申請の時点で、人員基準・設備基準を満たし、事業開始の状況が確定している必要があります |
さらに、必要書類がすべてそろっていないと、申請は受け付けてもらえません。事前協議は、「事業所の人員配置や設備など、事前に整備しておくことが必要な事項を確認するもの」とされています。準備が整っていない状態では、先に進めないのです。
具体例:やりがちな順番ミス4つ
【図3】順番ミスの一覧
| ミス | 起こること | 避け方 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 法人を先に作ったが、定款の事業目的に障がい福祉が入っていない | 定款の変更が必要になる(登記の手続きが伴う場合もあります) | 法人を作る段階で、事業目的を確認する |
| 2 | 物件の準備を先に進める | 設備基準に合わない。建築・消防の届出に、相当の期間がかかる | 契約・工事の前に、自治体へ確認する |
| 3 | 人員の確保が、申請に間に合わない | サビ管の要件を、申請の時点で満たしていない | 人員を、申請の時点で確定させる |
| 4 | 事前協議の期限を見落とす | 指定日が、翌月以降に延期される | 指定日の3か月前から、逆算する |
ミス1:定款の事業目的に、障がい福祉が入っていない
指定を受けるには、定款に、障がい福祉サービス事業の記載が必要です。法人を設立したあとで、目的の記載が足りないと気づくと、定款を変更する必要があります(登記の手続きが伴う場合もありますので、詳細は専門家にご確認ください)。
ミス2:物件を先に進め、あとから確認事項が出てくる
物件は、開設する事業所の設備基準に合う必要があります。建築基準法や消防法などの届出が必要になり、相当の期間がかかる可能性があることが、大阪市の案内に書かれています。
大阪府では、事前協議の前に、物件の平面図などを確認したい場合、メールで事前相談ができるとされています(対象・条件は、サービスにより異なります)。
ミス3:人員の確保が、申請に間に合わない
大阪市の案内では、申請の時点で、サービス管理責任者(児童福祉法のサービスでは、児童発達支援管理責任者)の要件を満たしている必要があるとされています。また、他の事業所で働いている方を配置する場合は、申請までに、その方の配置を変更する届出(変更届)が必要です。
「採用は開設の直前でよい」と考えていると、申請に間に合いません。
ミス4:事前協議の期限を見落とす
事前協議が必要なサービスは、指定日の3か月前に手続きが必要です。大阪府の就労継続支援A型・B型の場合、提出期限は、「指定日の3か月前の15日」とされています。期限までに事前協議が完了しないと、指定日は翌月以降に延期されます。
サービスごとに、事前協議が必要かどうかを確認しましょう
事前協議が必要かどうかは、サービスによって、また自治体によっても異なります。
【図4】事前協議が必要か、不要か(大阪市・大阪府の比較)
| サービス | 大阪市 | 大阪府 |
|---|---|---|
| 居宅介護 | 不要 | 不要 |
| 重度訪問介護 | 不要 | 不要 |
| 同行援護・行動援護 | 不要 | 不要 |
| 生活介護 | 必要 | 必要 |
| 就労移行支援 | 必要 | 必要 |
| 就労継続支援A型・B型 | 必要 | 必要 |
| 就労定着支援 | 不要 | 必要 |
| 自立生活援助 | 不要 | 必要 |
| 短期入所 | 必要 | 必要 |
| 自立訓練 | 必要 | 必要 |
| 共同生活援助(グループホーム) | 必要 | 必要 |
| 児童発達支援・放課後等デイサービス | 必要 | 必要(障がい児通所支援の案内) |
- 太字の「就労定着支援」「自立生活援助」は、大阪市と大阪府で、扱いが違います。
- 大阪府の「一般相談支援」は不要です。大阪市の「相談支援」も不要です。
- 堺市など、他の窓口の扱いは、この表には入っていません。事業所を置く市の窓口で、ご確認ください。
共通のチェックリストは、別の記事へ
法人・役員の条件、必要書類、お金(入金の時期と報酬の単価)、物件や立地の法令など、どのサービスにも共通して確認したいことは、別の記事にまとめています。
サービスごとの詳しい記事
サービスごとに、人員・設備の条件や、手続きの流れが異なります。詳しくは、各サービスの記事をご覧ください。
| サービス | この記事でわかること | 記事 |
|---|---|---|
| グループホーム(共同生活援助) | 物件・消防・人員の確認と、事前協議の順番 | 準備中(他記事の公開後にリンクを追加します) |
| 就労継続支援A型・B型 | 生産活動・収支の見通し、A型の現地確認 | 準備中(他記事の公開後にリンクを追加します) |
| 放課後等デイサービス | 児童発達支援管理責任者の確保、物件の確定と契約の順番 | 準備中(他記事の公開後にリンクを追加します) |
| 児童発達支援 | 事業所とセンターの違い、事前協議の流れ | 準備中(他記事の公開後にリンクを追加します) |
| 生活介護 | 看護職員を含む人員、採光・換気などの物件条件 | 準備中(他記事の公開後にリンクを追加します) |
| 居宅介護(事前協議が不要なサービス) | 申請予約・面談・郵送の違い、締切 | 準備中(他記事の公開後にリンクを追加します) |
開設のご相談は「現役介護福祉士×行政書士」の当事務所へ
開設の準備は、書類の手続きだけでなく、「どんな体制で、どんな支援を行うか」という運営の設計と切り離せません。
当事務所は、現役の介護福祉士としての現場経験と、行政書士としての申請実務の両方を持っています。申請の順番や期限の整理から、開設後の運営体制まで、あわせてご相談いただけます。
サービスごとの要件や、開業から運営までの流れは「障がい福祉サービス開業・運営の完全ガイド」にまとめています。人員基準は「障害福祉サービスの人員基準一覧」もご覧ください。
まとめ
- 開設は、「開設したい月」から逆算して進めます(指定日は毎月1日付)
- 申請の時点で、法人格・定款の事業目的・人員・設備がそろっている必要があります
- 事前協議が必要なサービスは、指定日の約3か月前に手続きします。事前協議が不要なサービスは、締切が指定日の約3週間前です
- 事前協議が必要かどうかは、サービスと自治体によって違います(例:就労定着支援は、大阪市は不要、大阪府は必要)
- 事前協議や本申請が間に合わないと、指定日は翌月以降に延期されます
制度やスケジュールは変わることがあります。開設をお考えの方は、お早めにご相談ください。
開設前の確認に使える「共通チェックリスト【大阪版】」(PDF・A4で2ページ)を無料でダウンロードできます。印刷して、□にチェックを入れながらお使いください。
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