行動援護は、知的障がいや精神障がいにより行動上著しい困難のある方に、危険を回避するための支援や外出時の介護などを行うサービスです。人員の基準は居宅介護と共通ですが、働く人の資格要件が居宅介護とは異なります。そのため、「事務所も人もそろったのに、要件を満たす人がいない」という順番の失敗が起こりやすいサービスです。この記事では、大阪府・大阪市の公式の案内をもとに、開設前に押さえておきたい「順番」を表で整理してご紹介します。
この記事のポイント(3つ)
- 行動援護では、介護福祉士などの資格だけでは足りず、「行動援護従業者養成研修」または「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修・実践研修)」の修了と、知的障がい・精神障がいの方への直接支援の経験が、原則として求められるとされています。
- サービス提供責任者は、研修の修了に加えて直接支援の経験3年以上が必要とされ、開設の準備でいちばんの壁になりやすいところです。
- 大阪市で開設する場合、行動援護は事前協議が不要ですが、申請の予約期限があります。事業開始日から逆算して準備を進めておくと安心です。
この記事で使う言葉(用語解説)
| 言葉 | かんたんな意味 |
|---|---|
| 行動援護 | 知的障がい・精神障がいにより行動上著しい困難があり、常時介護が必要な方に、危険を回避するための援護や外出時の移動中の介護などを行う障害福祉サービス。 |
| 障害支援区分 | 必要とされる支援の度合いを示す区分。行動援護は、区分3以上で、認定調査の行動関連項目(12項目)の合計が10点以上の方が対象とされています(厚生労働省「障害福祉サービスの内容」)。 |
| 行動援護従業者養成研修 | 行動援護に従事するための研修。大阪府では、府が指定した研修事業者が実施しています。 |
| 強度行動障害支援者養成研修 | 強度行動障がいのある方を支援する職員向けの研修(基礎研修・実践研修)。大阪府では、行動援護従業者養成研修と同じカリキュラムで実施されているとされています(大阪府の案内では「強度行動障がい支援者養成研修」と表記されています)。 |
| 直接支援業務 | 知的障がい・精神障がいのある方への、入浴・排せつ・食事などの介護や、調理・洗濯などの家事の支援。 |
| サービス提供責任者 | 支援の計画づくりや、ヘルパーへの指導などを担う職員。 |
結論:「研修を修了した人」を確保するところから始める
【図1】開設までの流れ(大阪市の例)
| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 事業所を置く市町村と、指定の窓口を確認する | 大阪府内では、市町村によって指定の窓口が異なります(図5) |
| 2 | 要件を満たすサービス提供責任者を確保する | 研修の修了+直接支援の経験3年以上が必要とされています |
| 3 | 要件を満たす従業者を確保する | 研修の修了+直接支援の経験1年以上が必要とされています |
| 4 | 法人の事業目的・事務所・運営規程を整える | 人員・設備の基準は居宅介護と共通とされています |
| 5 | 申請の予約をして、受付期間内に申請する | 大阪市では、電話で面談日時を予約したうえで、来庁して提出するとされています |
| 6 | 指定時研修を受け、指定を受けて事業開始 | 大阪市では、指定を受ける月の前月25日ごろの指定時研修に、原則として管理者が出席するとされています |
大阪市の手引きでは、申請の受付の時点で人員が確定していることが必要とされています。人の確保を後回しにすると、ほかの準備が整っても申請に進めないことがあります。まず「誰がサービス提供責任者になれるか」を確認するのが、行動援護の開設では近道です。
理由:行動援護は「人の要件」が居宅介護と違うから
大阪府の障害福祉サービス等指定申請の手引きでは、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護の人員の基準は共通とされています。
【図2】行動援護の人員の基準(居宅介護と共通)
| 職種 | 必要な人数 | 主なポイント |
|---|---|---|
| 管理者 | 1人(常勤) | 管理業務に支障がなければ、ほかの職務と兼務できるとされています |
| サービス提供責任者 | 1人以上(常勤・専従) | 事業の規模(サービス提供時間・従業者数・利用者数)に応じて増えるとされています |
| 従業者 | 常勤換算で2.5人以上 | サービス提供責任者を含めて数えます |
ただし、大阪府の手引きでは、同行援護と行動援護の場合、サービス提供責任者と従業者に、それぞれ1名以上、資格要件を満たす人の配置が必要とされています。この「資格要件」が、居宅介護とは異なります。
【図3】行動援護の資格要件(大阪市の指定申請の手引きより)
| 必要な研修 | 必要な経験 | |
|---|---|---|
| サービス提供責任者 | 行動援護従業者養成研修、または強度行動障害支援者養成研修(基礎研修・実践研修)の修了 | 知的障がい児者・精神障がい者の直接支援業務に3年以上かつ540日以上 |
| 従業者 | 同上 | 知的障がい児者・精神障がい者の直接支援業務に1年以上かつ180日以上 |
※ 「1年以上」とは、業務に従事した期間が1年以上で、かつ実際に従事した日数が1年あたり180日以上であることをいう、とされています。
※ 直接支援業務には、居宅介護・生活介護・共同生活援助・就労継続支援などでのヘルパーや生活支援員の業務、児童発達支援・放課後等デイサービスでの業務などが含まれるとされています。
(出典:大阪市「障がい福祉サービス事業者等 指定申請の手引き」令和8年1月)
つまり、介護福祉士の資格や、居宅介護のサービス提供責任者の経験があっても、研修を修了していなければ、原則として行動援護の要件を満たしません(例外は下の「【図3の補足】」を参照)。居宅介護をすでに運営している事業所が行動援護を追加する場合も、同じ点に注意が必要です。
【図3の補足】研修を修了しているかどうかで変わる確かめ方
| 研修の修了 | 確かめること |
|---|---|
| 修了している(行動援護従業者養成研修、または強度行動障害支援者養成研修の基礎研修・実践研修) | 知的障がい児者・精神障がい者の直接支援業務の経験(サービス提供責任者は3年以上かつ540日以上、従業者は1年以上かつ180日以上)を確かめる |
| 修了していない | 令和3年3月31日の時点で、介護福祉士・実務者研修修了者・看護師など、大阪市の手引きの表に挙げられた資格(行動援護の欄に「注5」が付いたもの)を持っていたかを確かめる。当てはまる場合は、令和9年3月31日まで経過措置があり、サービス提供責任者は直接支援業務に5年以上かつ900日以上従事した経験で足りるとされています。経過措置はその後廃止されるとされていて、令和9年4月以降も配置を続ける場合は、それまでに研修を修了しておく必要があると考えられます。当てはまらない場合は、研修の修了が必要とされています(図3) |
(出典:大阪市の手引きの注5・大阪府の令和6年度集団指導の案内)従業者の扱いを含め、個別の扱いは指定権者にご確認ください。
具体例:やりがちな順番ミス4つ
【図4】順番ミスの一覧
| ミス | 起こりやすいこと |
|---|---|
| ミス1:「介護福祉士がいるから大丈夫」と考える | 研修の修了がなく、要件を満たす人がいないことに後から気づく |
| ミス2:研修の時期を確認しない | 研修の日程が合わず、修了が開設予定日に間に合わない |
| ミス3:実務経験の中身を確認しない | 経験年数はあっても、知的障がい・精神障がいの方への直接支援の経験として数えられない |
| ミス4:申請の予約期限を見落とす | 指定日が1か月以上先になる |
ミス1:「介護福祉士がいるから大丈夫」と考える
居宅介護では、介護福祉士や実務者研修の修了者がサービス提供責任者になれるとされています。しかし行動援護では、図3のとおり、行動援護従業者養成研修、または強度行動障害支援者養成研修(基礎研修・実践研修)の修了が求められるとされています。
採用や配置を決める前に、研修の修了証と、直接支援の経験の両方を確認しておくと安心です。
ミス2:研修の時期を確認しない
大阪府「行動援護従業者養成研修について」では、行動援護従業者養成研修は、府が指定した研修事業者(2026年9月時点で27事業者)が実施していて、研修の日程は各研修事業者に問い合わせるよう案内されています。また大阪府「強度行動障がい支援者養成研修について」では、行動援護従業者養成研修は、強度行動障がい支援者養成研修(基礎研修・実践研修)と同じカリキュラムで実施しているとされています。
研修は、実施する事業者や年度によって開催時期が決まっています。たとえば、大阪府が実施する令和8年度の強度行動障がい支援者養成研修は、申込みの受付が8月28日までで、基礎研修の演習は10月15日が最後の日程とされています(実践研修の演習は12月8日〜11日の予定とされています)。これから研修を受ける場合は、府が指定した研修事業者が行う行動援護従業者養成研修の日程を、各事業者に問い合わせて確かめる方法があります。開設予定日から逆算して、いつまでに誰が研修を修了するかを先に決めておくと安心です。
ミス3:実務経験の中身を確認しない
行動援護で求められる経験は、知的障がい児者・精神障がい者への直接支援業務の経験とされています。介護の経験年数が長くても、その中身によっては数えられないことがあります。
勤めていた事業所・職種・期間・従事日数がわかる資料(実務経験の証明)をそろえられるかどうかも、早めに確認しておくと手戻りを防げます。
ミス4:申請の予約期限を見落とす
大阪府内では、事業所を置く市町村によって、指定の窓口が異なります。
【図5】大阪府内の指定の窓口
| 事業所の所在地 | 指定の窓口 |
|---|---|
| 大阪市・堺市・吹田市・高槻市・豊中市・寝屋川市・枚方市・東大阪市・八尾市・茨木市・柏原市・松原市 | 各市 |
| 池田市・箕面市・豊能町・能勢町 | 箕面広域 |
| 富田林市・河内長野市・大阪狭山市・太子町・河南町・千早赤阪村 | 南河内広域 |
| 岸和田市・泉大津市・貝塚市・和泉市・高石市・忠岡町 | 岸和田広域 |
| 泉佐野市・泉南市・阪南市・熊取町・田尻町・岬町 | 泉佐野広域 |
| 守口市・大東市・羽曳野市・門真市・摂津市・藤井寺市・四條畷市・交野市・島本町 | 大阪府 |
(出典:大阪府「権限移譲について」)
大阪市「新規指定申請の手続きについて」では、指定日は毎月1日で、行動援護は事前協議が不要とされています。そのかわり、申請予約期限までに、福祉局障がい者施策部運営指導課へ電話で面談日時を予約し、受付期間内に来庁して申請書類を提出する流れとされています。
大阪市の日程表では、指定日の前々月の10日ごろが申請予約期限、前々月の20日ごろから前月の10日ごろまでが申請受付期間になっています(日付は月ごとに少しずれます。日程は予定で、変更されることがあるとされています)。実際の日付は、大阪市の最新の日程表で確かめておくと安心です。
【図6】大阪市の申請スケジュールの例(事前協議が不要なサービス。2026年10月15日時点の大阪市の日程表より)
| 指定日 | 申請予約期限 | 申請受付期間 |
|---|---|---|
| 2027年1月1日 | 2026年11月10日 | 2026年11月20日〜12月10日 |
| 2027年2月1日 | 2026年12月10日 | 2026年12月21日〜2027年1月12日 |
※ 最新の日程は、大阪市「新規指定申請の手続きについて」のページでご確認ください。
また大阪市の手引きでは、申請の受付の時点で、法人の定款の手続きや、人員・設備が「事業開始時点の状況」で確定していることが必要とされています。予約の時点で人の目処が立っていないと、受付に進めない可能性があります。
法人・役員・物件など、障害福祉サービスに共通する準備は、開設前に確認したい「共通チェックリスト」、居宅介護の基準は居宅介護を開設する前の「順番」の記事で整理しています。外出の支援では、移動支援を開設する前の「順番」もあわせてご覧ください。
開設の前に:ご自身で確かめられることと、ご相談いただけること
| ご自身で確かめられること | 行政書士中谷法務事務所にご相談いただけること |
|---|---|
| サービス提供責任者・従業者の候補の方の研修の修了証(行動援護従業者養成研修、または強度行動障害支援者養成研修の基礎研修・実践研修)。前の勤め先で、実務経験の証明(事業所・職種・期間・従事日数)を出してもらえるか。事業所を置く市町村の窓口(図5)と、希望する指定日の申請予約期限 | 候補の方が資格要件に当てはまるかの整理(最終的な判断は指定権者によります)、実務経験の証明書を含む指定申請の書類の準備、指定日から逆算した日程表、居宅介護とあわせて指定を受ける場合の体制の整理 |
迷うときは、事業所を置く市町村などの指定の窓口にご確認ください。
まとめ
- 行動援護の人員の基準は居宅介護と共通ですが、サービス提供責任者と従業者には、行動援護独自の資格要件があるとされています。
- 求められるのは、行動援護従業者養成研修、または強度行動障害支援者養成研修(基礎研修・実践研修)の修了と、知的障がい・精神障がいの方への直接支援の経験(サービス提供責任者は3年以上、従業者は1年以上)とされています。介護福祉士の資格だけでは、原則として足りません。
- 大阪市では事前協議は不要ですが、申請予約期限があり、受付の時点で人員が確定している必要があるとされています。
行動援護の開設では、「研修を修了し、経験のある人を確保する」ことが最初の一歩になると考えられます。研修の日程と申請の予約期限から逆算して、準備を進めておくと安心です。
免責:この記事は、2026年10月8日時点(2026年10月15日に一部見直し)の厚生労働省・大阪府・大阪市の公式の案内をもとにした一般的な情報のご紹介です。要件や手続きは、指定を行う市町村などによって異なり、変更されることもあります。個別の要件は、事業所を置く市町村などの指定の窓口にご確認ください。
行動援護の開設のご相談は「介護福祉士×行政書士」の当事務所へ
行動援護は、研修の修了や実務経験など、人の要件を早めに確認しておきたいサービスです。
行政書士中谷法務事務所では、介護福祉士でもある行政書士が、現場を知る立場から、人員の要件の確認や、居宅介護とあわせた体制づくり、指定申請の準備をお手伝いします。



コメント