居宅介護の開設で最初に押さえたいのは、「事前協議が不要」でも、申請の締切は厳しく、書類がそろっていなければ受け付けてもらえないことです。居宅介護は、グループホームや就労継続支援などと違って、事前協議が不要なサービスです。ただ、そのぶん、申請の段階で、人員・事務所・書類がすべて整っている必要があります。この記事では、国の基準(省令)と、大阪府・大阪市の公式情報をもとに、開設前の順番と、つまずきやすい点を、図や表で整理します。
この記事のポイント(3つ)
- 居宅介護は事前協議が不要ですが、申請の時点で、人員・事務所・書類がすべてそろっている必要があります。
- ヘルパーは常勤換算で2.5人以上。サービス提供責任者と管理者も必要です(国の基準)。
- 締切は、大阪市は申請予約と面談、大阪府は郵送(消印有効)。最終締切は指定日の約3週間前です。
この記事で使う言葉(用語解説)
| 言葉 | かんたんな意味 |
|---|---|
| 居宅介護 | 障がいのある方の自宅を訪問して、入浴・排せつ・食事などの介護や、調理・洗濯・掃除などの家事、生活に関する相談や助言といった、生活全般の援助を行うサービス。 |
| サービス提供責任者(サビ責) | 訪問介護の計画づくりや、ヘルパーへの指示・調整などを担う職員。事業所に置くことが求められます。 |
| 常勤換算 | 職員の勤務時間を、常勤の職員の勤務時間に換算して数える方法。たとえば、常勤の職員2人分、という数え方をします。 |
| 事前協議 | 正式な申請の前に、人員や設備などの計画を、自治体と確認する手続き。居宅介護は、事前協議が不要です。 |
| 重度訪問介護・同行援護・行動援護 | 居宅介護と同じ仲間の訪問系サービス。事前協議が不要なサービスとして案内されています。基準の一部は、居宅介護と共通です。 |
結論:事前協議がなくても、「申請の時点」ですべてを整えましょう
【図1】開設までの流れ

| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 指定を受けたい月を決める | 大阪市は、2か月前の申請予約から逆算。大阪府は、最終締切(指定日の約3週間前)から逆算します |
| ② | 窓口(大阪市・大阪府など)を確認する | 事業所を置く場所によって、手続きが変わります |
| ③ | 法人と定款を整える | 法人格と、定款の事業目的を確認します。役員の欠格要件も確認します |
| ④ | 人員を確保する | ヘルパー(常勤換算2.5人以上)、サービス提供責任者、管理者を、申請までに確定させます |
| ⑤ | 事務所を確保する | 専用の区画があるかを確認します |
| ⑥ | 書類をそろえる | 書類が1つでも不足していると、受け付けてもらえません |
| ⑦ | 締切までに、申請する | 大阪市は申請面談、大阪府は郵送。締切を過ぎると、指定は翌月以降に延期されます |
| ⑧ | 資金を確保する | 入金は、サービス提供開始から約2か月後です |
理由:事前協議がなく、いきなり本申請から始まるから
大阪府の案内では、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・重度障害者等包括支援・一般相談支援は、事前協議が不要とされており、本申請の協議から始まります。大阪市の案内でも、居宅介護は、事前協議が不要な事業に含まれています。
つまり、自治体と計画を事前にすり合わせる場がないまま、申請に進みます。申請の時点で、人員・事務所・書類が整っていなければ、指定は翌月以降に延期されます。
国の基準(障害者総合支援法にもとづく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)では、居宅介護について、次のように定められています。
【図2】人員・設備の基準(国の基準)
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 従業者(ヘルパー) | 事業所ごとに、常勤換算で2.5人以上。従業者は、国が定める資格などを持つ方が対象です(資格の内容は、国の告示で定められています) |
| サービス提供責任者 | 事業所ごとに、常勤の従業者で、専ら居宅介護の職務に従事する方のうち、事業の規模に応じて1人以上。人数については、事業の規模に応じて、常勤換算によることもできます。新規に指定を受けるときの事業の規模は、「推定数」です |
| 管理者 | 専らその職務に従事する常勤の管理者。ただし、管理上支障がない場合は、他の職務との兼務や、他の事業所などの職務との兼務もできます |
| 設備 | 事業の運営を行うために必要な広さを持つ、専用の区画。居宅介護の提供に必要な設備や備品などを備える |
居宅介護は、利用者の自宅で支援を行うため、事務所は「専用の区画」があれば足り、グループホームや通所のサービスのような、居室や作業室は不要です。重度訪問介護・同行援護・行動援護については、人員・管理者・設備の基準が、居宅介護と同じ内容で準用されています。
具体例:やりがちな順番ミス5つ
【図3】順番ミスの一覧
| ミス | 起こること | 避け方 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 「事前協議が不要」=「準備が少なくてよい」と考える | 書類がそろわず、受付されない | 書類や要件を、自分で確認してそろえる |
| 2 | 締切と、手続きの流れを間違える | 最終締切を過ぎると、指定が翌月以降に延期される | 大阪市と大阪府の流れの違いを確認する |
| 3 | 人員の確保が、申請に間に合わない | 申請の時点で、人員が満たせない | 申請の時点で確定させる |
| 4 | 事務所の「専用の区画」を確保しないまま進める | 専用の区画といえるか、確認が必要になる | 契約や工事の前に、自治体へ確認する |
| 5 | 法人・定款や、資金の準備を後回し | 法人格・定款の条件を満たせない。資金が足りない | 法人・定款と、運転資金を早めに用意する |
ミス1:「事前協議が不要」=「準備が少なくてよい」と考える
大阪市の案内では、指定申請の書類一式がそろっていない場合は、受付ができません。大阪府でも、最終締切を過ぎた場合は、いかなる理由でも、指定は翌月以降に延期されます。
事前協議がないぶん、自治体の担当者に、事前に相談しながら準備を進める機会が少ないことになります。書類や要件は、自分で確認して、そろえる必要があります。
ミス2:締切と、手続きの流れを間違える
手続きの流れは、大阪市と大阪府で異なります。
【図4】大阪市と大阪府の手続きの違い
| 大阪市 | 大阪府 | |
|---|---|---|
| 指定日 | 毎月1日付 | 毎月1日付 |
| 申請のしかた | 指定を受けたい月の2か月前に、申請予約(電話で面談日時を予約)→ 申請受付期間内に、申請面談 | 本申請協議の書類一式を、郵送で提出 |
| 持っていくもの・出すもの | 身分を証する物と、指定申請書類一式(原本と写しの2部) | 本申請協議書類一式 |
| 締切 | 申請予約の期限と、申請の受付期間 | 「1回目の提出期限」と「最終締切日(消印有効)」 |
【図5】大阪市の日程の例
| 指定日 | 申請予約の期限 | 申請の受付期間 |
|---|---|---|
| 令和8年7月1日 | 5月11日 | 5月20日〜6月10日 |
| 令和8年8月1日 | 6月10日 | 6月19日〜7月10日 |
【図6】大阪府の日程の例
| 指定日 | 本申請1回目提出期限 | 最終締切日(消印有効) |
|---|---|---|
| 令和8年8月1日 | 令和8年6月22日(月) | 令和8年7月10日(金) |
| 令和8年9月1日 | 令和8年7月21日(火) | 令和8年8月10日(月) |
| 令和8年10月1日 | 令和8年8月20日(木) | 令和8年9月10日(木) |
| 令和9年3月1日 | 令和9年1月20日(水) | 令和9年2月10日(水) |
最終締切は、指定予定日の約3週間前です。最終締切を過ぎると、いかなる理由でも、指定は翌月以降に延期されます。
ミス3:人員の確保が、申請に間に合わない
人員の基準は、【図2】のとおりです。
- 従業者は、国が定める資格などを持つ方が対象です
- サービス提供責任者は、常勤で専ら居宅介護の職務に従事する方です
- 新規に指定を受けるときの事業の規模は、「推定数」で計算します
なお、居宅介護と、重度訪問介護・同行援護・行動援護を、同じ事業所で一体的に運営する場合は、サービス提供責任者の人数の考え方が変わります(一体的に運営している事業の規模全体で、判断します)。
人員は、申請の時点で、確定している必要があります。「開設してから、ヘルパーを探す」では、間に合いません。
ミス4:事務所の「専用の区画」を、確保しないまま進める
居宅介護の事務所には、事業の運営に必要な広さを持つ、専用の区画が必要です。ほかの事業と兼用の場合や、自宅の一室を使う場合などは、専用の区画といえるかどうか、確認が必要になることがあります。契約や工事の前に、自治体へ確認してください。
なお、大阪府は、障がい福祉サービス事業を始めるにあたっての注意事項として、都市計画法・建築基準法・消防法などの確認を案内しています。居宅介護の事務所に、これらのどれが当てはまるかは、個別に、自治体でご確認ください。
ミス5:法人・定款や、資金の準備を後回しにする
【図7】法人・定款・資金の条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人格 | 大阪市の案内では、指定を受けるには、法人格が必要 |
| 定款 | 定款に、障がい福祉サービス事業を行うことが記載されている必要がある |
| 資金 | 大阪府の案内では、給付費の振込は、サービスの提供を始めてから約2か月後。法人や事業所の立ち上げにかかる資金に加えて、少なくとも2、3か月分の人件費などの運転資金を確保する |
共通の手続きは、総論と共通チェックリストの記事へ
法人・定款・役員の欠格要件・必要書類・収支計画(級地)・物件や立地の法令など、どのサービスにも共通する内容は、総論の記事と、共通チェックリストの記事でまとめています。
居宅介護の開設のご相談は「現役介護福祉士×行政書士」の当事務所へ
居宅介護は、事前協議がないぶん、申請の時点で、人員・事務所・書類のすべてを整える必要があります。締切に間に合わなければ、開設の時期がそのまま後ろにずれます。また、利用者の自宅で、安心して支援を行える体制づくりも、大切な点です。
当事務所は、現役の介護福祉士としての現場経験と、行政書士としての申請実務の両方を持っています。人員の組み立てから、書類の準備、締切から逆算したスケジュールの作成、申請、開設後の運営体制まで、あわせてご相談いただけます。
サービスごとの要件や、開業から運営までの流れは「障がい福祉サービス開業・運営の完全ガイド」にまとめています。人員基準は「障害福祉サービスの人員基準一覧」もご覧ください。
▶ 居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護の違いや、ヘルパーの資格の要点は、訪問系サービスの指定申請・開設ガイドで一覧にしています。
まとめ
- 居宅介護は、事前協議が不要です。ただし、申請の時点で、人員・事務所・書類がすべてそろっている必要があります
- ヘルパーは、常勤換算で2.5人以上。サービス提供責任者(常勤の専従)と、常勤の管理者も必要です
- 事務所には、専用の区画が必要です
- 大阪市は、申請予約と面談(書類は原本と写しの2部)。大阪府は、郵送で、最終締切(消印有効)は指定日の約3週間前です
- 最終締切を過ぎると、いかなる理由でも、指定は翌月以降に延期されます
制度は変わることがあります。開設をお考えの方は、お早めにご相談ください。
開設前の確認に使える「共通チェックリスト【大阪版】」(PDF・A4で2ページ)を無料でダウンロードできます。印刷して、□にチェックを入れながらお使いください。
開設後も、処遇改善加算の毎年の手続きや、運営指導(旧:実地指導)への備えなど、継続してご相談いただける顧問契約もご用意しています。詳しくは料金案内ページをご覧ください。
居宅介護の開設、書類や人員の準備をどう進めればよいかお悩みではありませんか?
申請の締切から逆算して、人員・事務所・書類の準備を、現場目線と申請実務の両面から整理します。




コメント