令和8年度の障害福祉サービス等報酬改定では、一部のサービスについて、令和8年6月1日以降に新しく指定を受けた事業所に限り、基本報酬を一定程度引き下げた「応急的な報酬単価」を適用する特例が設けられました。この記事では、厚生労働省の公表資料をもとに、対象となるサービス、対象にならないケース、従前の単価のままとなる「配慮措置」を、表で整理してご紹介します。
この記事のポイント(3つ)
- 対象は就労継続支援B型・共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)・児童発達支援・放課後等デイサービスの4つで、令和8年6月1日以降に新規指定された事業所とされています。既存の事業所は従前どおりです。
- 基本報酬は、サービスごとに所定単位数の1000分の972〜988(約1.2〜2.8%の引き下げ)とされています。
- 適用は令和9年度報酬改定までの間とされ、重度の方への支援や、離島・中山間地域などには配慮措置(従前の単価のまま)が設けられています。
この記事で使う言葉(用語解説)
| 言葉 | かんたんな意味 |
|---|---|
| 報酬改定 | 障害福祉サービスの報酬(事業所が受け取る費用)の単価や要件を、国が見直すこと。 |
| 基本報酬 | サービスを提供したときに、もとになる報酬。加算・減算はこれに上乗せ・差し引きされます。 |
| 所定単位数 | 報酬を計算するときの、もとになる単位数。 |
| 新規指定 | 事業所として、はじめて自治体(指定権者)から指定を受けること。 |
| 指定権者 | 事業所の指定を行う自治体(都道府県・政令市・中核市など)。 |
| 配慮措置 | 一定の条件に当てはまる場合に、応急的な報酬単価ではなく従前の単価を適用するしくみ。 |
結論:対象は4サービスの「令和8年6月1日以降の新規指定」
厚生労働省の資料では、この特例は次のように説明されています。
- 対象サービス:就労継続支援B型、共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)、児童発達支援、放課後等デイサービス
- 対象事業所:令和8年6月1日以降に新規指定された事業所(既存事業所については従前どおり)
- 期間:令和9年度報酬改定までの間(告示改正・令和8年6月施行)
これから上の4サービスの開設を考えている方にとっては、事業計画(収支の見込み)を立てるうえで、知っておきたい制度の動きといえます。
なぜ新規の事業所だけなのか
厚生労働省の資料では、障害福祉サービス等の総費用が増え、人材確保が課題となるなかで、収支差率が高く、かつ、事業所が急増しているサービスについて、サービスの質を担保しつつ制度の持続可能性を確保する観点から、新規事業所に限り、臨時応急的な見直しを行うと説明されています。
対象の4サービスは、次の3つの条件にすべて当てはまるものとして選ばれています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 費用の規模 | 年間総費用額全体に占める割合が1%以上 |
| 収支差率 | 令和6年度の収支差率が5%以上 |
| 事業所の伸び | 事業所の伸び率が、過去3年間5%以上の伸びを続けている |
また、厚生労働省のQ&Aでは、この単価は令和9年度報酬改定までの間のみに適用するもので、令和9年度報酬改定に向けては改めて議論を行う予定とされています。
【表】対象サービスと応急的な報酬単価
| サービス | 応急的な報酬単価 | 引き下げの目安 |
|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 所定単位数の1000分の984 | 約1.6% |
| 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型) | 所定単位数の1000分の972 | 約2.8% |
| 児童発達支援 | 所定単位数の1000分の988 | 約1.2% |
| 放課後等デイサービス | 所定単位数の1000分の982 | 約1.8% |
※「引き下げの目安」は、1000分の○○から計算したおおよその割合です。
※ 共同生活援助のうち、外部サービス利用型は対象サービスに挙げられていません。
※ 実際の金額は、サービスの区分・定員・地域区分・加算などによって変わるため、この記事では試算を載せていません。
【表】対象になるケース・ならないケース
厚生労働省のQ&A(VOL.1・VOL.2)では、ケースごとの扱いが示されています。
| ケース | 応急的な報酬単価 | 根拠 |
|---|---|---|
| 令和8年6月1日以降に新規指定を受けた事業所 | 適用 | 改定資料、Q&A VOL.1 問5 |
| 令和8年6月1日より前から指定を受けている事業所 | 適用しない(従前どおり) | 改定資料 |
| 既存事業所の従たる事業所追加・単位追加・定員増加・住居追加(GHのサテライトを含む) | 対象とならない | Q&A VOL.1 問13 |
| 事業譲渡・吸収合併等で、指定手続の簡略化や報酬上の実績の通算を行った場合 | 適用対象外 | 改定資料、Q&A VOL.1 問12 |
| 就労継続支援A型からB型への変更(新規指定が必要) | 適用 | Q&A VOL.1 問14 |
| グループホームのサービス種別変更(届出で足りる) | 対象とならない | Q&A VOL.1 問14 |
| 共生型・基準該当のサービス | 適用しない | Q&A VOL.1 問16 |
| 既存の事業所が、多機能型として新たに対象サービスの指定を取った場合 | 既存のサービスは適用しない/新たに指定を取ったサービスは適用 | Q&A VOL.1 問17 |
| 日中サービス支援型グループホームの短期入所 | 適用対象外 | Q&A VOL.1 問15 |
| (旧)医療型児童発達支援から児童発達支援へ移行するための新規指定 | 適用しない | Q&A VOL.1 問18 |
| 多機能型から分離して別の場所で運営する(新規指定が必要)場合で、新設分割に当たるとき | Q&A VOL.1 問12と同じ扱い | Q&A VOL.2 問1 |
なお、Q&Aでは、定員増加や事業所追加で対応する場合でも、人員配置基準や設備基準を満たし、支援が行き届く体制になっているかを確認したうえで届出を受理するよう、指定権者に求めています。
従前の単価のままとなる「配慮措置」
受入れニーズが特に高い重度の方への支援や、サービスが不足している地域については、一定の配慮として、従前の報酬単価を適用するとされています。
重度の方への配慮(サービスごとに対象が異なります)
| サービス | 従前の単価が適用されるもの |
|---|---|
| 就労継続支援B型 | 医療連携体制加算(Ⅳ)を算定する利用者/視覚・聴覚言語障害者支援体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)、高次脳機能障害者支援体制加算を算定する事業所 |
| 共同生活援助 | 重度障害者支援加算(Ⅰ)(Ⅱ)、医療的ケア対応支援加算、医療連携体制加算(Ⅳ)を算定する利用者/視覚・聴覚言語障害者支援体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)、高次脳機能障害者支援体制加算を算定する事業所 |
| 児童発達支援 | 主として重症心身障害児を通わせる事業所/医療的ケア区分(1〜3)の基本報酬、強度行動障害児支援加算、人工内耳装用児支援加算(Ⅰ)(Ⅱ)、視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算を算定する利用者 |
| 放課後等デイサービス | 主として重症心身障害児を通わせる事業所/医療的ケア区分(1〜3)の基本報酬、強度行動障害児支援加算(Ⅰ)(Ⅱ)、人工内耳装用児支援加算、視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算を算定する利用者 |
Q&Aでは、次のような運用も示されています。
- 利用者ごとに算定する加算の場合は、その利用者についてのみ対象外、事業所の体制で算定する加算の場合は事業所全体が対象外(Q&A VOL.1 問10)
- 1日でも対象の加算の算定があれば、その月の分は応急的な報酬単価の適用対象外(Q&A VOL.1 問9)
地域への配慮
- 離島・中山間地域(特別地域加算の対象地域)にある事業所
- 自治体が客観的に必要であるとして設置する事業所(①公募によりサービスが不足する地域に設置する事業所、②自治体から補助等の経済的支援を得て設置する事業所)
Q&Aでは、配慮措置に当たるかどうかは指定時の主たる事業所の状況や住所で判断するとされています(Q&A VOL.1 問7)。また、運営への補助や、サービスの質・人材確保のための補助は、必ずしも地域のニーズを満たす趣旨とは限らないため、対象外にはしないとされています(Q&A VOL.1 問24)。
お住まいの地域で、公募や補助が配慮措置に当たるかどうかは、指定権者(所管の自治体)へのご確認をおすすめします。
開設を考えている方の確認ポイント
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 開設予定のサービスが4サービスに当たるか | B型・共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)・児童発達支援・放課後等デイサービス |
| 事業計画(収支の見込み) | 応急的な報酬単価を前提にした場合の見込みも、あわせて考えておく |
| 配慮措置に当たる可能性 | 重度の方の受入れ体制(対象の加算)や、事業所の所在地(離島・中山間地域、公募・補助) |
| 既存の法人の場合 | 新規指定か、定員増加・事業所追加などか(扱いが異なるとされています) |
| 大阪市で就労継続支援B型を考えている場合 | 大阪市では、令和8年8月1日指定分から令和9年7月1日指定分まで、B型の新規指定が停止されています(→ 大阪市が就労継続支援B型の新規指定を停止) |
なお、Q&Aでは、いわゆる「駆け込み申請」について、指定権者は通常の事前相談・審査スケジュールや標準処理期間に従って処理することが望ましく、過剰な兼任などで人員を確保していると疑われる場合には、ヒアリングや現地調査で十分に確認するよう求めています(Q&A VOL.1 問3)。
サービスごとの要件や、開業から運営までの流れは「障がい福祉サービス開業・運営の完全ガイド」にまとめています。人員基準は「障害福祉サービスの人員基準一覧」もご覧ください。
まとめ
- 令和8年6月1日以降に新規指定された4サービスの事業所には、基本報酬を一定程度引き下げた応急的な報酬単価が適用されるとされています。
- 引き下げは所定単位数の1000分の972〜988で、適用は令和9年度報酬改定までの間とされています。
- 定員増加・事業所追加・事業譲渡などは扱いが異なり、重度の方への支援や一部の地域には配慮措置があります。
令和9年度報酬改定に向けて、改めて議論が行われる予定とされています。今後の動きにも注目していきたいところです。
免責:この記事は、2026年9月29日時点の厚生労働省の公表資料をもとにした一般的な情報のご紹介です。個別の事業所に応急的な報酬単価や配慮措置が適用されるかどうかは、指定権者(所管の自治体)にご確認ください。
出典(すべて2026年9月29日確認)
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(令和8年2月18日)p.19〜23
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和8年3月31日)
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.2」(令和8年7月13日)
開設前の事業計画づくりから、指定申請までご相談いただけます
応急的な報酬単価が適用されるかどうかで、開設後の収支の見込みは変わってきます。
行政書士中谷法務事務所では、現役の介護福祉士でもある行政書士が、現場を知る立場から、重度の方の受入れ体制も含めた事業計画づくりと、指定申請の準備をお手伝いします。



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