就労継続支援A型・B型の開設で最初に押さえたいのは、エリアの確認と、「どんな作業を、どう収益にするか」の見通しを、物件や人員より先に固めることです。A型・B型は「生産活動(作業)」が事業の中心で、そこから利用者に賃金や工賃を支払います。この見通しが甘いまま物件や人員の準備を進めると、事前協議で行き詰まるおそれがあります。この記事では、国の基準(省令)と、大阪府・大阪市・堺市の公式情報をもとに、開設前の順番と、つまずきやすい点を、図や表で整理します。
この記事のポイント(3つ)
- エリアと、作業内容・収支の見通しを、物件や人員より先に固めます。
- A型は「収入−経費」で賃金を賄える見通し、B型は工賃の月平均額3,000円以上が必要です(国の基準)。
- 大阪府の事前協議の期限は、指定日の3か月前の15日です。担当者との協議まで完了する必要があります。
この記事で使う言葉(用語解説)
| 言葉 | かんたんな意味 |
|---|---|
| 就労継続支援A型 | 一般企業などで働くことが難しい方が、事業所と雇用契約を結んで働くサービス。賃金が支払われます。 |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約を結ばずに、作業などの活動を通じて、働く機会や訓練を受けられるサービス。作業の対価として、工賃が支払われます。 |
| 生産活動 | 事業所で行う作業(製品づくり、サービスの提供など)。その収入が、賃金や工賃の元になります。 |
| 賃金・工賃 | A型で雇用契約を結んだ利用者に支払うお金を賃金、B型などで支払うお金を工賃といいます。 |
| 職業指導員・生活支援員 | 作業の指導や、日常生活面の支援を行う職員。 |
| サービス管理責任者(サビ管) | 利用者一人ひとりの支援計画づくりなどを担う専門職。 |
| 事前協議 | 正式な申請の前に、事業の内容や人員・設備などの計画を、自治体と確認する手続き。A型・B型は、事前協議が必要です。 |
結論:「エリア」と「生産活動・収支の見通し」を先に固めましょう
【図1】開設までの流れ

| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ① | エリアを決める | 大阪市のB型は新規指定が停止しています。堺市と、大阪府が指定権者の9市町村は、受付をしています(中核市などは各市に確認) |
| ② | A型かB型かを決める | 雇用契約の有無や、賃金・工賃の考え方が異なります |
| ③ | 作業内容と収支の見通しを固める | A型は賃金、B型は工賃を、どこから支払うかを考えます |
| ④ | 指定を受けたい月を決め、事前協議の期限から逆算する | 大阪府は、指定日の3か月前の15日です |
| ⑤ | 人員の見通しを立てる | 職業指導員・生活支援員・サビ管。常勤の要件に注意します |
| ⑥ | 物件は、契約・工事の前に、自治体へ確認する | 作業室・相談室の条件と、建築・消防の届出。A型は、現地確認の9項目も見ておきます |
| ⑦ | 事前協議に進み、担当者との協議まで完了させる | そのあとに、本申請へ進みます |
とくに大阪府では、令和8年9月1日指定分から、A型・B型の事前協議で、事業内容や生産活動の収支をまとめた書類の提出が求められています。作業と収支の見通しを、あとから考えるのでは間に合いません。
理由:A型・B型は、生産活動の収支が事業の土台になるから
国の基準(障害者総合支援法にもとづく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)では、A型・B型について、次のように定められています。
【図2】A型とB型の違い
| 項目 | A型 | B型 |
|---|---|---|
| 雇用契約 | 原則として、利用者と雇用契約を結びます | 雇用契約を結ばない形が基本です |
| 支払うお金 | 賃金 | 工賃(生産活動の収入から、必要な経費を引いた額に相当する金額) |
| 収支の基準 | 生産活動の収入から必要な経費を引いた額が、賃金の総額以上になるようにする | 利用者それぞれに支払われる月あたりの工賃の平均額は、3,000円を下回ってはならない |
| その他 | 賃金の支払いに要する額は、原則として、自立支援給付(国の給付)で充ててはならない | 年度ごとに工賃の目標水準を設定し、利用者に通知するとともに、都道府県に報告する |
| 一言でいうと | 作業で得た収入から経費を引いた額で、賃金を賄える見通しが必要 | 作業から収入を得る計画と、工賃の目標水準を毎年度設定する |
具体例:やりがちな順番ミス5つ
【図3】順番ミスの一覧
| ミス | 起こること | 避け方 | |
|---|---|---|---|
| 1 | エリアの確認が後回し | 大阪市のB型は、新規指定が行われていない | 最初にエリアの受付状況を確認する |
| 2 | 作業内容と収支の見通しが固まらない | 事前協議で行き詰まる。書類が出せない | 何を作業にするか、どこから収入を得るかを先に整理する |
| 3 | 事前協議の期限を見落とす | 指定日が翌月以降に延期される | 大阪府は指定日の3か月前の15日から逆算する |
| 4 | 人員の条件(常勤・数)を確認しない | 申請の時点で、人員が満たせない | 常勤の要件と、申請時点で確定させる必要を確認する |
| 5 | 物件の設備・届出が後回し | 作業室・相談室の条件に合わない。届出に時間がかかる | 契約・工事の前に、自治体へ相談する |
ミス1:エリアの確認が後回しになる
同じ「大阪」でも、エリアによって状況が違います。
【図4】エリア別の状況
| エリア | 状況 |
|---|---|
| 大阪市 | B型は、令和8年8月1日以降の新規指定を行っていません(総量規制)。A型は、事前協議が必要なサービスとして案内されています。詳しくは、B型の総量規制の記事をご覧ください |
| 大阪府が指定権者の9市町村(守口市・大東市・羽曳野市・門真市・摂津市・藤井寺市・四條畷市・交野市・島本町) | A型・B型は、受付停止ではありません。ただし、令和8年9月1日指定分から、事前協議の提出書類とスケジュールが変わっています |
| 中核市・権限移譲先(豊中市・吹田市・東大阪市などの中核市、茨木市・柏原市・松原市、池田市・岸和田市・富田林市・泉佐野市などの広域福祉課の地域) | 大阪府ではなく、各市・広域福祉課が指定を行います。受付の状況や事前協議の期限は、それぞれの窓口で確認が必要です |
| 堺市 | A型・B型とも、新規指定申請を受け付けています。ただし、申請予約の前に、事前協議を完了しておく必要があります |
ミス2:作業内容と収支の見通しが固まらないまま、物件や人員を進める
大阪府では(大阪府が指定権者の9市町村の事業所)、就労継続支援A型・B型の事前協議で、次の書類が必要です(令和8年9月1日指定分から)。
【図5】大阪府の事前協議(A型・B型)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必要な書類 | 「【就労継続支援事業所】事業内容確認書」 「生産活動内容と収支状況に関するシート」 |
| 審査の方法 | 書面と面談で審査されます |
| 担当者との協議 | 事前協議の手続きのあとに、担当者との協議(事業内容などの審査・確認・ヒアリング)まで完了することが必要です |
| 提出期限 | 指定日の3か月前の15日 |
| 間に合わない場合 | 指定日が翌月以降に延期されます |
「作業は入居してから考える」では、この段階で行き詰まります。何を作業にするか、どこから収入を得るかを、先に整理しておきましょう。
ミス3:事前協議の期限を見落とす
審査や確認には時間がかかるため、大阪府は、日程を考えて早めの手続きを求めています。堺市も、事前協議の完了が申請予約の前提です。申請書類の補正が、補正期間内に完了しない場合は、原則として指定できず、開始月が1か月遅れると案内されています。
ミス4:人員の条件(常勤・数)を、確認しないまま進める
国の基準では、A型・B型(B型は、A型の基準を準用します)の従業者は、次のように定められています。
【図6】人員の基準(国の基準)
| 職種 | 基準 | 例 |
|---|---|---|
| 職業指導員・生活支援員 | 2つの職種の合計が、常勤換算で、利用者の数を10で割った数以上。職業指導員は1人以上、生活支援員も1人以上 | 利用者が20人なら、合計で常勤換算2人以上 |
| 常勤の要件 | 職業指導員または生活支援員のうち、1人以上は常勤 | |
| サービス管理責任者 | 利用者が60人以下なら、1人以上。そのうち、1人以上は常勤 |
- 新規に指定を受けるときの利用者の数は、「推定数」で計算します。
- 大阪市の案内では、サービス管理責任者は、申請の時点で要件を満たしている必要があります。他の事業所で働いている方を配置する場合は、申請までに変更届が必要です。
ミス5:物件の設備・届出を、後回しにする
【図7】設備の基準(国の基準)
| 設備 | 基準 |
|---|---|
| 訓練・作業室 | 訓練または作業に支障がない広さで、必要な機械器具などを備える |
| 相談室 | 話の内容が漏れないよう、間仕切りなどを設ける |
| 洗面所・便所 | 利用者の特性に応じたもの |
| 多目的室 | 相談室と兼用できる(支援に支障がない場合) |
広さの具体的な数字は、国の基準には示されていません(「支障がない広さ」とされています)。自治体が、個別に確認する場合がありますので、契約や工事の前に、自治体へ相談してください。また、大阪市の案内では、建築基準法や消防法などの届出に、相当の期間がかかる可能性があるとされています。
A型は、指定の前に大阪府の「現地確認」があります
大阪府は、「就労継続支援A型事業等」について、事業の指定を行う前に、現地確認を実施しています。
【図8】大阪府の現地確認の項目(9つ)
| 番号 | 確認する内容 |
|---|---|
| 1 | バリアフリーへの配慮(身体に障がいのある方を受け入れる場合) |
| 2 | 防犯・安全対策 |
| 3 | 訓練・作業スペースの広さ |
| 4 | 機械器具の有無 |
| 5 | トイレの外側からの開錠(できること) |
| 6 | やけど対策(タオルの使用禁止など) |
| 7 | 多目的室の、食事の提供に必要な広さ |
| 8 | 火気を使う部分の、不燃対策 |
| 9 | 避難経路の確保 |
つまり、物件を決める段階で、これらを満たせる部屋かどうかを見ておく必要があります。大阪府の公式ページの本文冒頭には「大阪府では、就労継続支援A型事業等の適正な運営の確保を図る目的から、事業の指定を行う前に現地確認を実施しています」と明記されており、対象はA型のみです。B型は対象に含まれません。準備するものや日程については、大阪府の担当窓口(福祉部障がい福祉室生活基盤推進課 指定・指導グループ)へご確認ください。
事前協議の前に、市町村への連絡が必要な地域があります
大阪府は、「特定障がい福祉サービスの指定に関する意見等」として、生活介護・就労継続支援A型・就労継続支援B型について、次の9つの市町村の意見等を、事前協議の前に確認するよう案内しています。
【図9】事前協議の前に、市町村への連絡が必要な地域
| 市町村 |
|---|
| 守口市、大東市、羽曳野市、門真市、摂津市、藤井寺市、四條畷市、交野市、島本町 |
- 事前協議の提出の前に、事業所を置く市町村の担当課へ、事業内容の説明や、ニーズの確認などの連絡を行うことは、必須とされています。
- とくに、島本町と交野市は、事前協議の前に、担当課への開設の連絡や、事業内容の説明を希望しています。
共通の手続きは、総論と共通チェックリストの記事へ
法人・定款・役員の欠格要件・必要書類・収支計画(級地)など、どのサービスにも共通する内容は、総論の記事と、共通チェックリストの記事でまとめています。
就労継続支援の開設のご相談は「現役介護福祉士×行政書士」の当事務所へ
A型・B型は、書類の手続きだけでなく、「どんな作業を行い、利用者の方が働き続けられる環境をどう作るか」という運営の設計と切り離せません。
当事務所は、現役の介護福祉士としての現場経験と、行政書士としての申請実務の両方を持っています。エリアや、A型・B型の選び方、事前協議の書類、人員の組み立て、開設後の運営体制まで、あわせてご相談いただけます。
要件・流れの全体像は「就労継続支援A型・B型の違いと開設・運営ガイド」にまとめています。
まとめ
- A型・B型は、エリアと、生産活動・収支の見通しを、物件や人員より先に固めましょう
- 大阪市のB型は新規指定が停止中です。堺市と、大阪府が指定権者の9市町村は受付中で、大阪府は令和8年9月1日指定分から事前協議の書類が変わっています。中核市などは、各市・広域福祉課の取扱いを確認しましょう
- A型は、生産活動の収入から経費を引いた額が、賃金の総額以上になる必要があります。B型は、工賃の月平均額が3,000円を下回ってはならず、年度ごとに目標水準を設定します
- 職業指導員・生活支援員は、合計で利用者数÷10(常勤換算)。サビ管を含め、常勤の要件があります
- 大阪府の事前協議は、指定日の3か月前の15日が期限です。担当者との協議まで完了しないと、指定日が翌月以降に延期されます
- A型は、指定の前に、大阪府の現地確認(9項目)があります
制度は変わることがあります。開設をお考えの方は、お早めにご相談ください。
開設前の確認に使える「共通チェックリスト【大阪版】」(PDF・A4で2ページ)を無料でダウンロードできます。印刷して、□にチェックを入れながらお使いください。
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出典(確認日 2026-09-27)
就労継続支援A型・B型の開設、何から決めればよいかお悩みではありませんか?
エリア・作業内容・人員・物件を、事前協議から逆算して、現場目線と申請実務の両面から整理します。



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