障害福祉サービスの事業所は、国の「情報公表システム」で、事業所の情報を報告することが法律で義務づけられています。報告していないと、「情報公表未報告減算」で、基本報酬などが5%または10%減らされることがあります。さらに、令和7年度からは、事業所の経営情報(収益・費用など)の報告も始まり、こちらは毎年の報告が必要です。この記事では、厚生労働省と大阪市の公式資料をもとに、報告のしくみと減算のルール、忘れないための管理のしかたを、表で整理します。
この記事のポイント(3つ)
- 報告していない場合の減算は、所定単位数の10%(グループホーム・入所施設など)または5%(そのほかのサービス)です。
- 未報告が分かると、未報告になった時点までさかのぼって減算されることがあります。指定更新のときにも、報告済みかを確認されます。
- 経営情報は毎年の報告が必要です(毎会計年度終了後3か月以内)。期限までに報告しないと、期限の翌月から減算の対象になります。
この記事で使う言葉
- 障害福祉サービス等情報公表制度:利用者がサービスを選べるように、事業所の情報を公表するしくみ。事業者には報告の義務があります(障害者総合支援法第76条の3、児童福祉法第33条の18)。
- 情報公表システム(WAM NET):独立行政法人福祉医療機構が運営する、報告と公表のためのシステム。事業者はここで情報を入力して、自治体に報告します。
- 所定単位数:報酬を計算するときの、もとになる単位数。減算は、この単位数から一定の割合を差し引くしくみです。
- 情報公表未報告減算:情報公表の報告をしていない事業所の報酬を減らすしくみ。令和6年度の報酬改定で新しくできました。
- 経営情報:事業所の収益・費用、職員の人数や給与の総額など。令和7年度から報告が始まりました。
- 指定更新:6年ごとに、事業所の指定を更新する手続き。
結論:「開設時に1回報告したきり」になっていないか、今すぐ確認を
【図1】報告するものと、減算のルール
| 報告するもの | いつ報告するか | 報告しないと |
|---|---|---|
| 事業所の情報(基本情報・運営情報) | サービスを始めるとき、その後は毎年度、自治体が決める時期に更新 | 新規指定のあと一度も報告していない場合などに、減算の対象 |
| 経営情報(収益・費用など) | 毎会計年度終了後3か月以内 | 期限の翌月から減算の対象 |
まずは、ご自分の事業所の報告が済んでいるかを確認しましょう。そのうえで、毎年の報告を「年間の予定」に組み込んでおくことが、減算を防ぐいちばんの近道です。
理由:報告は法律上の義務で、減算は「さかのぼって」かかることがあるから
情報公表未報告減算とは
令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定で、利用者への情報公表、災害発生時の迅速な情報共有、財務状況の見える化を進めるために、「情報公表未報告減算」が新しくできました。障害者総合支援法第76条の3にもとづく報告がされていない場合、所定単位数が減算されます。
【図2】減算の割合と対象サービス(厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」より)
| 減算の割合 | 対象サービス |
|---|---|
| 所定単位数の10% | 療養介護、施設入所支援(障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助(グループホーム)、宿泊型自立訓練、障害児入所施設 |
| 所定単位数の5% | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所、生活介護、自立生活援助、自立訓練(宿泊型自立訓練を除く)、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、就労選択支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援(障害者支援施設が行う各サービスを除く) |
あわせて、都道府県知事等は、指定更新の申請があったときに、情報公表の報告がされているかを確認することになりました。
減算は、いつから、いつまでかかるのか
厚生労働省のQ&Aでは、次のように示されています。
【図3】減算のかかり方(厚生労働省のQ&Aより)
| 場面 | 取扱い |
|---|---|
| 減算がかかる流れ | 必須の報告項目が未報告であることが、指定更新や運営指導などで確認され、自治体が報告するよう指導してもなお報告しない場合に、減算が適用されます |
| いつの分から | 未報告の時点までさかのぼって減算の対象になります |
| いつまで | 報告していない状況が解消された月まで |
| 新規指定の事業所 | 自治体の実施要綱で決めた報告期限の翌月から減算の対象になります |
| 事業所の情報の毎年の更新 | 新規指定のあと、一度でも報告していれば、減算の対象にはなりません。ただし、内容が変わったときの更新も、制度の趣旨をふまえて適切に行うよう求められています |
| 経営情報 | 毎年度必要な報告のため、未報告の場合は報告期限の翌月から減算の対象になります |
| 災害などのやむを得ない事情 | 減算の対象としない扱いができます |
厚生労働省のQ&Aでは、「8月に報告状況を確認したところ、令和6年4月より前から未報告だったと分かった場合、令和6年4月分の報酬から減算の対象となる」という例が示されています。気づいたときには、数か月分の報酬が減算の対象になっている、ということもありえます。
指定更新のときにも確認される
指定更新の申請のときに、必須の報告項目の一部または全部が未報告の場合、自治体は、未報告の事情を個別に確認し、報告するよう指導したうえで更新の手続きを行うことになっています。更新の準備が始まってから慌てることのないよう、日ごろから報告を済ませておくことが大切です。
具体例:大阪市の場合の、報告の時期
大阪市の「令和8年度大阪市障がい福祉サービス等情報公表事務に関する実施要領」では、報告の時期が次のように決められています。
【図4】大阪市の報告の時期(令和8年度の実施要領より)
| 事業者 | 報告の開始 | 報告の期限 | 報告する情報 |
|---|---|---|---|
| 4月1日より前からサービスを提供している事業者 | その年度の5月1日 | その年度の7月31日 | 基本情報・運営情報・経営情報 |
| 4月1日以降に新しく指定を受けた事業者 | 指定を受けた日 | 指定を受けた日から2か月以内 | 基本情報 |
報告すると、大阪市が内容を確認して公表します(すでにサービスを提供している事業者は報告後2か月以内、新しく指定を受けた事業者は報告後1か月以内)。
大阪市の案内では、「すでに報告を行った事業者についても、毎年度、情報の更新が必要」とされています。また、情報公表システムで報告したあと、申請状況が「未承認」の場合や、大阪市から「差戻し」があった場合は、報告しているものとみなされ、減算の対象にはならないと案内されています。
大阪府では、大阪市・堺市・高槻市・東大阪市・豊中市・枚方市・八尾市・寝屋川市・吹田市に事業所がある場合は、それぞれの市が情報公表の事務を行っています。報告の時期や方法は、事業所がある自治体の案内を確認してください。
もう1つの報告:経営情報(令和7年度から)
令和7年度から、事業所の経営情報(収益・費用など)も、情報公表システムで報告することになりました。厚生労働省のQ&Aのポイントは次のとおりです。
【図5】経営情報の報告のポイント(厚生労働省の説明会資料より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報告の期限 | 毎会計年度終了後3か月以内に更新 |
| 初回(令和7年度)の報告 | 令和7年度の決算情報を、令和8年3月末までに報告 |
| 決算情報がない事業所 | 前の年度の決算情報がない事業所(例:令和7年3月に指定された事業所)は、令和7年度の報告の対象外 |
| 給与の報告 | 職員全体の給与(人件費)の報告は必須。職種別の給与は任意 |
| 公表のされ方 | 事業所ごとではなく、グループにまとめた分析結果が公表されるため、個人や事業所が特定される形では公表されない |
| 未報告の場合 | 令和7年度分を令和8年3月末までに報告せず、指導されてもなお報告しない場合は、令和8年4月1日にさかのぼって減算の対象。令和8年度以降は、報告期限の翌月から減算の対象 |
経営情報は、決算の時期に合わせて報告期限が決まるため、決算の作業とセットで予定を組んでおくと、忘れにくくなります。
【チェックリスト】報告を忘れないために
| いつ | やること | チェック |
|---|---|---|
| 開設したとき | 情報公表システムに報告する(期限は自治体の実施要綱で確認。大阪市は指定から2か月以内) | □ |
| 毎年度(大阪市は5月1日〜7月31日) | 事業所の情報を更新して報告する | □ |
| 決算のあと3か月以内 | 経営情報を報告する | □ |
| 職員・定員・サービス内容などが変わったとき | 変更届とあわせて、情報公表の内容も見直す | □ |
| 指定更新の前 | 報告が済んでいるかを確認する | □ |
| 報告したあと | 自治体から「差戻し」がないか、メールを確認する | □ |
ポイント:情報公表の報告は、変更届、処遇改善加算の計画・実績報告、指定更新など、ほかの届出と一緒に1年分の予定表で管理すると、抜け漏れを防ぎやすくなります。
サービスごとの要件や、開業から運営までの流れは「障がい福祉サービス開業・運営の完全ガイド」にまとめています。人員基準は「障害福祉サービスの人員基準一覧」もご覧ください。
まとめ:情報公表の報告は「毎年の予定」に組み込みましょう
- 情報公表の報告をしていないと、所定単位数の10%または5%が減算されることがあります。
- 未報告が分かると、未報告の時点までさかのぼって減算されることがあり、指定更新のときにも確認されます。
- 令和7年度からは経営情報の報告も始まり、毎会計年度終了後3か月以内の報告が必要です。
日々の支援で忙しいと、年に1回の報告は後回しになりがちです。まずは、ご自分の事業所の報告状況を確認するところから始めてみてください。
免責:この記事は、2026年9月28日時点の公的機関の資料をもとにした一般的な情報です。報告の時期・方法は自治体によって異なります。個別の事業所の取扱いは、指定権者(所管の自治体)にご確認ください。
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行政書士中谷法務事務所では、現役の介護福祉士でもある行政書士が、現場の忙しさを知る立場から、1年分の報告・届出のスケジュールづくりと、抜け漏れを防ぐしくみづくりをお手伝いします。



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