処遇改善加算の取得・計画書・実績報告書作成サポート

障がい福祉サービス事業所にとって、処遇改善加算は職員の賃金改善に直結する重要な加算です。一方で、加算率の区分や職場環境等要件、実績報告書の作成など、毎年対応が必要な事務も多く、書類の不備によって加算の返還を求められるケースもあります。ここでは制度の全体像から、加算額の考え方、実績報告書作成の注意点までを整理します。

1. 処遇改善加算とは

障がい福祉サービスの処遇改善加算は、従来3つに分かれていた加算(福祉・介護職員処遇改善加算、福祉・介護職員等特定処遇改善加算、福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算)が令和6年度に一本化されたものです。さらに令和8年6月以降は、加算Ⅰ・Ⅱにそれぞれ上位区分「ロ」が新設され、事業所が満たす要件の水準に応じて段階的に加算率が設定される仕組みになっています。

加算率はサービスの種類(就労継続支援、グループホーム、放課後等デイサービスなど)によって異なります。正確な加算率は都道府県が公表している加算率一覧表で、ご自身の事業所が該当するサービス区分・加算区分を確認してください。

2. 対象となるサービス

処遇改善加算は、障がい福祉サービスの多くが対象です。令和8年6月の制度改定により、これまで対象外だった相談支援系のサービスも新たに加算の対象に加わりました。

サービス区分主なサービス
訪問系居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護
通所系生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、児童発達支援、放課後等デイサービス
居住系共同生活援助(グループホーム)など
相談支援系(令和8年6月〜対象)計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援

上記以外にも対象となるサービスがあります。自事業所が対象かどうかは、都道府県が公表している加算率一覧表でご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。

3. サービス別の加算率の目安

加算率は、サービスの種類と、事業所が満たす加算区分(Ⅰ〜Ⅳ)によって細かく分かれています。令和8年6月時点の目安は次のとおりです。実際の加算率は制度改定や地域区分によって変わるため、必ず最新の公表資料でご確認ください。

訪問系サービス

サービス加算率の目安
居宅介護30.2%〜44.6%
重度訪問介護24.8%〜37.2%
同行援護30.2%〜44.6%
行動援護27.7%〜41.1%

通所系サービス

サービス加算率の目安
生活介護6.7%〜9.3%
自立訓練(機能訓練・生活訓練)10.6%〜16.4%
就労移行支援8.1%〜11.5%
就労継続支援A型7.5%〜10.8%
就労継続支援B型7.4%〜10.5%
児童発達支援11.7%〜15.2%
放課後等デイサービス11.9%〜15.5%

相談支援系サービス(令和8年6月〜)

計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援は、いずれも一律5.1%です。

4. 加算を取得するための3つの要件

① キャリアパス要件

賃金体系を就業規則等に明文化する「任用要件」、研修計画の策定・実施に関する「研修要件」、昇給の仕組みを規定する「昇給要件」などから構成されます。目指す加算区分が上がるほど、満たすべき要件の数も増えていきます。

② 月額賃金改善要件

加算による収入のうち、一定割合以上を「基本給」または「毎月決まって支払う手当」で改善することが求められます。賞与や一時金でまとめて支給するだけでは、この要件を満たしたことにならない点に注意が必要です。

③ 職場環境等要件

生産性向上の取組と、それ以外の職場環境改善の取組を、加算区分に応じた項目数以上実施することが求められます。上位の加算区分ほど、必要な取組項目数も多くなります。年度によっては「対応の誓約」のみで算定できる経過措置が設けられることもありますが、実績報告の時点で未対応と判明すると、加算額の一部または全部の返還を求められることがあるため注意してください。

5. 加算額の計算方法

基本的な考え方は、その月に算定した障害福祉サービス費の合計単位数に、事業所が該当する加算率を掛け合わせて加算額を算出する、というものです。

  1. その月に算定したサービス費の合計単位数を確認する
  2. 都道府県公表の加算率一覧から、自事業所のサービス区分・加算区分に対応する加算率を確認する
  3. 合計単位数 × 加算率 で加算額(単位数)を算出し、地域区分の単価を掛けて円換算する
  4. 算出した加算額のうち、要件で定められた割合以上を月額の賃金改善(基本給・毎月の手当)に充てる
  5. 残りは賞与や一時金など、柔軟な形で職員に配分することも可能

職種間の配分は事業所の裁量に委ねられている部分もありますが、対象となる福祉・介護職員への配分を基本とし、他職種への配分は一定の制約の中で行う必要があります。

計算例

生活介護事業所(職員10名、年間サービス費総額4,000万円、加算Ⅰイ・加算率7.9%のケース)で考えると、次のようになります。

項目金額の目安
加算見込額(年額)約316万円
加算見込額(月額)約26.3万円
賃金改善に充てるべき額(月額)約13.2万円以上
職員10名で均等配分した場合の1人あたり約1.3万円以上

※加算Ⅰ・Ⅱは加算見込額の2分の1以上を月額の賃金改善に充てる必要があります。加算Ⅲ・Ⅳは加算見込額の全額を賃金改善に充てることが求められます。あくまで目安であり、実際の金額は地域区分やサービス提供実績によって変動します。

6. 実績報告書の書き方

処遇改善加算は、年度終了後に実績報告書を提出する必要があります。提出期限は、その事業年度で最後に加算の支払を受けた月の翌々月末日というのが全国共通の原則で、多くの場合7月31日が目安になります。ただし、都道府県が確認事務の都合で期限を延長することもあるため、必ず管轄の都道府県・市の最新の案内で確認してください。実績報告書には、主に次のような内容を記載します。

  • 計画書で見込んでいた賃金改善額と、実際に支払った賃金改善額の内訳
  • キャリアパス要件・職場環境等要件の実施状況
  • 加算総額と、月額賃金改善に充てた金額・その他の配分方法の内訳

計画と実績に大きな乖離がある場合、加算の一部返還を求められることがあります。日々の給与台帳や、職場環境等要件に関する取組の実施記録を残しておくことが、実地指導や報告書作成時の備えになります。

7. 実務でつまずきやすいポイント

  • 職場環境等要件の取組項目数は満たしているつもりでも、実施を裏付ける書類が残っておらず、実地指導で指摘される
  • 賃金改善を賞与でまとめて支給してしまい、月額賃金改善要件を満たせていなかった
  • 計画書提出後に職員の入退職があり、実績が計画と大きくズレてしまった

8. 行政書士が対応できる範囲について

処遇改善加算の書類作成は、行政書士と社会保険労務士の業務範囲が交差する分野です。ご依頼いただく前に、当事務所で対応できる範囲を明確にしておきます。

  • 対応できる範囲:処遇改善計画書・実績報告書の作成、行政機関への提出代行、必要書類の整備に関するご案内
  • 対応できない範囲:就業規則・賃金規程の作成、賃金の配分方法の決定、労務管理に関するご相談(これらは社会保険労務士の業務範囲となります)

賃金規程の整備や労務管理についてもあわせて相談されたい場合は、社会保険労務士など適切な専門家をご案内いたします。

処遇改善加算の実績報告は、指定申請と違って毎年発生する事務です。当事務所では、新規の指定申請だけでなく、こうした毎年の処遇改善加算の計画書・実績報告書の作成もあわせてサポートしています。制度の詳細や、実地指導への備え方については、

障がい福祉サービス開業・運営の完全ガイドや、料金の目安は料金案内のページもあわせてご覧ください。