建設業を営みながら、現場で出る産業廃棄物の運搬まで自社で対応したい、という相談は少なくありません。ただ、この許可は「誰が排出事業者にあたるか」という考え方を正しく理解していないと、思わぬ落とし穴にはまりやすい分野でもあります。
許可が必要になるのは「他人の廃棄物」を運ぶとき
産業廃棄物収集運搬業許可が必要になるのは、他人(他社)の産業廃棄物を運ぶ場合です。反対に、自分が排出した廃棄物を自分で運ぶ「自社運搬」であれば、この許可は不要というのが基本のルールです。これが最も基本の考え方になります。
ただし、自社運搬であっても許可が完全に不要になるわけではなく、産業廃棄物が飛散・流出したり悪臭が漏れたりしないようにする措置、運搬時に必要書類を携帯すること、車両への法定表示の3つの義務は残ります。
建設業では「自社の廃棄物のつもり」が実は他社の廃棄物になっていることがある
建設工事現場から出る廃棄物は、廃棄物処理法第21条の3により、原則として元請業者が「排出事業者」になります。そのため、下請業者が現場での自社作業によって出た廃棄物を、自社の車で運んだとしても、法律上は元請業者(他社)の廃棄物を運んでいることになり、収集運搬業許可なしでは運べないケースが多くなります。
例外として、元請業者が工事の全部を下請業者に一括して請け負わせ、元請業者が企画・調整・指導を実質的に行っていないと認められる場合に限り、下請業者が排出事業者とみなされることがありますが、これはかなり限定的なケースです。「自社の現場で出たものだから自社運搬で問題ない」と自己判断せず、契約形態を踏まえて個別に確認することをおすすめします。
許可の3つの要件
①講習会の受講
法人の役員または政令で定める使用人が、産業廃棄物処理業の許可申請に係る講習会(新規)を受講し、修了証(有効期限5年)を取得している必要があります。
②施設・設備要件
産業廃棄物が飛散・流出したり悪臭が漏れたりするおそれのない運搬車・運搬容器などの運搬施設を有していることが必要です。
③経理的基礎
継続的に事業を遂行できるだけの経理的基盤があることが求められます。利益を計上できているか、自己資本比率が10%を超えているかなどが評価の目安になり、基準に届かない場合は経営改善計画書の提出で対応できることもあります。役員や政令使用人などが欠格事由(破産者、一定期間内の刑事罰など)に該当しないことも条件です。
許可に必要な書類
新規許可申請では、主に次のような書類を用意します。法人と個人事業主、また積替え保管の有無などによって必要書類が変わります。
| 書類 | 内容・備考 |
|---|---|
| 産業廃棄物収集運搬業許可申請書 | 商号・事業の範囲・車両情報などを記載 |
| 事業計画の概要書類 | 収集運搬の方法や体制の概要 |
| 運搬施設の概要書類 | 運搬車両・容器の写真・概要 |
| 定款又は寄附行為 | 法人のみ |
| 履歴事項全部証明書(登記事項証明書) | 法人のみ |
| 役員等の住民票 | 本籍・国籍の記載があるもの |
| 成年後見登記されていないことの証明書 | 法務局が発行するもの |
| 政令使用人に関する申立書・組織図 | 該当する場合 |
| 誓約書 | 欠格要件に該当しないことの誓約 |
| 講習会修了証 | 新規講習の修了証(5年以内のもの) |
| 事業開始資金の総額と調達方法を記載した書類 | |
| 直前3年分の決算書一式・納税証明書 | 法人の場合 |
| 資産に関する調書・直前3年の所得税納税証明書 | 個人事業主の場合 |
| 財務(経営)改善計画書 | 経理的基礎が不足する場合 |
| 車検証の写し | 運搬車両の分すべて |
| 駐車場の図面・使用権原を証する書類 | 賃貸借契約書など |
| 積替え保管施設に関する書類 | 積替え保管を行う場合のみ |
| 委託先(収集運搬・処分)の許可証の写し | 該当する場合 |
許可は都道府県ごと(複数県で営業する場合の注意点)
産業廃棄物収集運搬業許可は都道府県(政令市)ごとに取得する制度です。廃棄物を都道府県をまたいで運ぶ場合は、次のように許可の要不要が変わります。
| 場所 | 許可の要否 |
|---|---|
| 積込み地の都道府県 | 必要 |
| 積卸し地の都道府県 | 必要 |
| 途中で通過するだけの都道府県 | 原則不要 |
手数料は許可を取得する自治体ごとに発生し、新規許可は81,000円、更新許可は73,000円〜74,000円、事業範囲の変更は71,000円〜72,000円が目安です(廃止・変更の届出は無料)。複数の都道府県で許可を取得する場合、その分だけ費用と事務負担が積み重なっていく点に注意が必要です。
有効期間と更新
許可の有効期間は、許可を受けた日から5年間(優良認定を受けた場合は7年間)です。この年数自体が変わることはありませんが、複数の都道府県で異なる時期に許可を取得した場合は、その分だけ更新のタイミングも県ごとにずれていきます。更新の申請は、有効期限の3か月前から受け付けられます。
まとめ
産業廃棄物収集運搬業許可は、建設業許可や測量業登録・建設コンサルタント登録とは別の制度ですが、公共工事や解体工事を手がける建設業者にとっては密接に関わってくる許可です。あわせて、建設業許可、解体工事業登録、測量業登録、建設コンサルタント登録、入札参加資格についてもご紹介していますので、事業の広げ方に応じてご確認ください。ご自身の現場が「他人の廃棄物」にあたるかどうか迷う場合は、お気軽にご相談ください。
